「私のワードローブから」 4 タウンスーツ The devil lives in the detail.


「美服は門戸を開く」
(愛すべき祖父の言葉より)
(、、、もうひとつ 祖父の言葉で覚えているのは、「背広にアイロンをかけるのに、何故、札-サツ-にあてないのか!」 -祖父がカワイソウナ女中さんにいった言葉 -祖父は シワクチャな紙幣を嫌っていた。外出するときには、手がきれるような新札を用意させた。たまに、その用意ができていないときは、お札にアイロンをあてることを 強要した、、、まだクレジットカードが普及する前のことです。)


d0004856_23143161.jpg「男のクラッシックな生地とは」

男のスーツ スタイルには、大きく分けて

「タウンスーツ」(文字通り、街中で着るスーツ。主には、日中用というのか、昼のスーツ。夜のデイナースーツとは区別される。)
「カントリースタイル」(カントリー、或いはスポーツ時のスーツ、スポーツ観覧時も含まれる)
「リゾート スタイル」(海辺、リゾート地でのスタイル)

の3つが、あり、

これに、「デイナー スーツ」「フォーマル(スペシャル オケイジョンと呼ぶ)」(モーニングコートとか、テイルコートなどのセレモニー用スーツ。タキシードは略式なので、デイナースーツに含まれる)が加わる。
厳密にいうと、「タウンスーツ」と「カントリースタイル」の中間あたりに、「セミスポーツ スーツ」と呼ばれる、タウンでもカントリーでも両方使えるモノがある。(これは、1930年代半ば頃に タウンスーツのカジュアル化といったトレンドがあり、その中で生まれたもので、 フラノ地などのミルド フィニッシュの生地も、タウン用に認められることになる。)
ジャケットやブレザーは,「デイ ウエア(day wear)」と呼ばれる。

この それぞれのスタイルに、男にふさわしい、クラッシックな生地(柄とともに、織りもスタイルによって、決められている)というのがあった。



残念なことに、今や、こうした、それぞれのスタイルを熟知し、それにふさわしい生地を識り、それらを揃えているテーラーは、いなくなった。



なぜならば、ライフスタイルそのものが、変ってしまったからだ。

服装というのはライフスタイルと、その社会性(平たく言えば、他人にどう見られるか、或いは、どう見られる必要があるか)を背景として発達改良されてきた。
昔の紳士のライフスタイルの大きな要素は「社交」であるから、この様々なスタイルの「正しい」服装を揃え,時、場所に応じて 適切な服装をすることが紳士たるものの嗜みであった。 服装に「社会性」があったということだ。
タオルミナだろうが、バーデンバーデンであろうが、ドーウ”イルだろうが、人とともに、「社交界」も移動してくる。避暑地には、避暑地での「社交」がある。そこには、また「見られる」ことと、「見る」ことという服装における社会性が常に存在していた。 


祖父が言った「美服は門戸を開く」という言葉は、こうした時代を背景としており、その意味でリアルである。ただ、拡大解釈すれば、現代においても当てはまるものがあると思う。


個人的には、「カントリースタイル」の4ply-6plyの厚手のツイルとか、手織りのハイツイストウーステッドや、味わい深いスコットランドの古代タータンなどに好みがあるのだが、ここでは「タウン スーツ」用の生地に先ず触れてみよう。



d0004856_0424274.jpgチョークストライプの魅惑

チョークストライプのスーツは、男のワードローブには,MUSTな一着だと思う。大人の男のスーツというのは、この柄から 始まる - という 個人的な 思い入れがある。

チャコールグレー地に白のチョークの ダブルブレステッドや、ネイビー地(英国的な少し明るめのもの)に やはり ホワイトチョークのシングル2ボタンの三つ揃い などは 男のスーツとしては タイムレスな エレガンスを持っていると 思う。(チョークに限らず 近頃の男は、クラッシックな良い柄を 見過ごしている と思います。知識不足の テーラーの責任もあるのでしょうけど。) 

ところで、この生地で、重要なのは、まさしく 白墨(チョーク)で線を引いたように、所々 かすれ、消え入りソウナ風情である。これが、この生地の 魅惑である。
この風情があるからこそ、スーツに仕立てたとき 独特の味わいがでる、、、一種のワビサビを 感じさせる生地なのです。

しかし、いまや、本格的なチョーク ストライプは、探さないと 見つからナイ。
「チョーク」ストライプとは 名ばかりで、定規で引いたようなものまでが、「チョーク」と呼ばれるのは 困ったモノだ。

もうひとつ こだわると、 ストライプの生地を選ぶとき、迷うのが、その間隔だが、 私は 20mmから25mmぐらいある 「広め」のモノが 好みで、ストライプの色も ダークグレイに 白の「チョーク」とか ハッキリしたものが好きだ。
間隔のあいた ストライプは、中庸が好まれる日本では敬遠されがちだが、昔のサビルローでは、むしろ エレガントな男らしい生地として 好まれた。



加えて、 この柄は、原則的に ミルド フィニッシュ(少し毛がたった)仕上げの フラノ地が よく似合う。(探せば、スムース仕上げの軽めの生地も あるが、、) このクラッシック フラノは 英国のウエストヨークシャーの ミル(生地工場)の 「お家芸」だが、 従来は 400gある 重い生地だった。
いかにも、英国の風土から 出てきたものだから仕方ないのだが、エアコンデイションが普及した 現代では 少し重い。それに、ビジネス シーンでは この重みは 少し オフシーン(リラックスしすぎというのか)に見える。 ただ、困ったことに この「重み」のある質感が この生地の味わいを 支えている。



”理想のチョーク”を求めて、、、ついに、私は ツテのあるヨークシャーのミルを頼って 織らせてみることにした。
サンザ 迷ったあげく、 ミルのチーフデザイナー氏のアドバイスもあり、コンポジションを Finest ラムウール95%と カシミア5%に変更してみた。仕上がりは 見た目の「重み」は そのままに、200g-270gという フラノでは極めて 軽量なものが出来上がった。
これは、日本では 3シーズン着られるウエイトだ。 

この生地は 顧客用のサンプルを織る 古い織機で 織ってもらった。

昔は、生地からビスポークする 個人顧客がいたそうだ。 ゼイタクなものだ。

歴史のあるミルでは, こうしたワガママで 特別なものを 望む顧客用に 限られた反数を織る織機が生産用のモノとは別に 工場の片隅に置かれていたという。 これで織られるものは、例えば 本人のイニシャルを ストライプ生地のように仕立てたもの(アマリ 趣味が良いとは 言えないが、、)とか、 デイストリクト チェックとよばれる その家 伝来の柄 というモノで、 他の織機とは扱い方が違うので、最古参の職人が担当したという。

頼んだミルには、 いまだ この織機が 置いてあった。(ちなみに このミルは その昔、 「ブリッテイシュ カーキ」と呼ばれる 軍服に使われていた 厚手のウール - チノクロス みたいなものですネ - を開発したことが 自慢だった。)



d0004856_20421278.jpgハウンドツース


順序からいえば、ピンストライプ(ダブルピンストライプの端正さについては 語りたいところだが)、オルタネイトストライプをとりあげるべきだろうけれど、ここは 個人的趣味から 「ハウンドツース」を 薦めたい。

この柄は、ご存知のように 本来 カントリースタイルのものだった。
それが、1930年代半ばに カントリータッチの生地で仕立てたスーツを 街着として着ることが かえって洒落ている という風潮があり、とくに このハウンドツースは さかんに着られるようになった。


当時の「エスクワイア」には、BLACK&GRAYのハウンドツースを シングル2ボタンの三つ揃いに 仕立て グレー地に白い衿のクレリックを 合わせた 魅力的なスーツスタイルが とりあげられている。

この柄は チョークストライプ グレナカートチェックと並ぶ 男のクラッシックである。柄の細かいものは、モーニングコートやジャケットにあわせる 替えズボンとして、古くから紳士の定番であったし、ウインザー候は この柄で ピークッド ラペルの ラグランコートを 仕立てさせた。

出自は、 「野趣」あるモノだったが、不思議に 上品な「モダンさ」をもっており、柄の大小をまちがえなければ、何を仕立てても 育ちの良さを 感じさせる。

いまや、カシミアからアイリッシュリネンまで、super150などの 細番手のものから コート地まで、 柄の大小、色の組み合わせも 様々なハウンドツースがある。 なかには、赤などのオーバープレイドを組み合わせたモノもある。

コツは スーツならば 「少し細かい カナ」と思うぐらいの 柄の小さなハウンドツースを、ジャケットならば 柄が識別できるぐらいのモノを選ぶのが 原則だと 思う。


ブルースーツ

「男のスーツは、ネイビーで始まり、ネイビーで終わる」という。誰が言い始めたのか、「誰も知らない」が、街のテーラーは、事あるごとに、ソウ言う。
ネイビーと限定しなければ、確かにブルースーツは男のクラッシックで、不思議に女性の評判も良い。






この項 つづく
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copyright 2005 Ryuichi Hanakawa

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by rikughi | 2005-04-19 23:15 | 4.タウンスーツ


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