カテゴリ:「百歳堂 交遊録」( 1 )

「百歳堂 交遊録」  上野の少年



「北蝦夷の古きアイヌのたたかひの矢の根などを愛す少年なりき」

(二・二六事件に連座した「歌人将軍」、斉藤少将の娘 史が、同じく二・ニ六に連座した青年将校 栗原安秀のことを詠んだ短歌より。史<後に歌人となる>は栗原と小学校の同級生だった。)


アイルランドの詩人、デイラン・トマスに「夏の少年 boy in the summer 」という詩がある。(ボブ・デイランも、この酔いどれの詩人を愛していたらしく、「デイラン」という芸名は彼に由来するという。)
デイラン・トマスの詩は、どこかヒネ曲がっていて、簡単には「美しい詩」に着地してくれない。けれど、中世的な言葉の飛躍の難解さにも関わらず、私は、この詩を読む度に、いつも、せつないノスタルジーを感じて戸惑ってしまう。

それは、とうに失った「少年」時代の、まだ鮮やかだった「夏」の或る日を、そこに思いおこすからだろうか。

少年の私は、夏を重ねるたびに、小さな経験を積んでいった。

記憶は、残念ながら、もう、断片的になってきている。遊びつかれた夏の日、縁側の廊下に寝転ぶと、やけに木の廊下が熱かったこと。泳いだ後に、耳にたまった水を抜くのに、陽に焼けた小石をあてると良いと教わったこと。確かに、水は、耳から丸っこい石に流れ出て、それを黒く濡らした。陽に灼かれたた銅色の肌は、風呂でこすると垢のように剥がれ落ちて白く痕を残した。












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by rikughi | 2005-10-27 23:30 | 「百歳堂 交遊録」