7月のパリ。 ミラノからシャルルドゴールに、深夜、着いた私は、出迎えの車でチュルリー公園近くのホテルに向かってシャンゼリゼを走っていた。 夏のパリの夜をドライブするのは、好みのひとつだ。 できれば、こんなジイサンくさい車ではなく、夜風をヒリヒリ感じることができるオープンが好ましい。 もう、30年近く前、友達が当時パリでは珍しかったえび茶のフォードムスタングをもっていて、二人で夜の街を徘徊していた。ただ、それだけで、今日一日がウキウキしたものになった。 パリの街とムスタング。 赤いフェラーリより かえって趣味が良いと思うのだけど。 いまの歳ならば、ピカピカ光った鯨のような古い型のキャデラックか。 パリは美しいけれど、街も、人も、社会も 思っている以上に保守的で古臭いので、 いかにもヨーロッパ的なもので 統一するより、アメリカ的なもの、或いはエスニックな風味という、少し「異国を感じさせる」コーデイネイトのほうが よりシックに映ると思う。 このことは、パリジャン、パリジェンヌも よくわかっていて、30年代のジョセフィン・ベーカーやジャズブームから、近年のワールドミュージックまで、パリほど異国の血に 包容力のある街は珍しい。 ベルエポックのパリでは、音楽や風俗だけならいざしらず、 花嫁までも メイド イン アメリカがもてはやされた 時期があった。 それは、好み だけではなく、彼女達がもっていた 富裕な財産が その大きな理由だった。 ボニ・カステラーネ伯爵(のちに侯爵)。彼も、また 富裕なアメリカ女性を娶った一人だった。 1867年,フランスでも有数の名家に生まれたボニは、青い目にブロンドの痩躯、洗練されたマナーと 溌剌として優雅な立ち居振る舞いで いやがうえでも 人を魅了した。 或る日のボニについて、こんな記述がある、 「突然、広場に見事な手綱さばきで馬車が乗り込んできた。 馬車には、紳士と麗しき貴婦人の二人。 紳士のいでたちが目をひいた。素晴らしい仕立ての純白のモーニングコートを着て、ラペルには真紅のカーネーションをさし、これも燃え立つような赤のシルクのタイをフォア イン ハンドで結び、純白の フェルト製のトップハットを被っていた。 彼の スラリと伸びた手は 白のデイアスキンの 見事な手袋でおおわれ、象牙のステッキを握りしめていた。」 ボニの伊達振りが 目に浮かぶようだ。 フランスでも最古の貴族の ひとつといわれる血統と、このダンデイ振りで ボニはベルエポックのパリ社交界の寵児となる。 copyright Ryuich Hanakawa 2005
by rikughi
| 2005-03-21 01:27
| ボニ・カステラーネ侯爵 1.
|
カテゴリ
INDEX プロローグ 「ダンデイというスタイル」 1. スタイル ボニ・カステラーネ侯爵 1. ボニ・カステラーネ侯爵 2. ボニ・カステラーネ侯爵 3. ボニ・カステラーネ侯爵 4. 「私のワードローブから」 1.ソックスをめぐるダンデイズム 2.美しいシャツ その壱 3.美しいシャツ その弐 4.タウンスーツ 「百歳堂 散策日誌」 ウイーンの仕立て屋 モンマルトルの恋人 京都のお化け ニューヨークのダンデイ 「六義 コレクション帖」 1. コレスポンデントシューズ 2. 「フィッテイング」 3. 「プレイドスーツ」 「男の躾け方」 1 「洗濯」 2 「睡眠」 3 「磨く」 4 「捨てる」 5 「友人」 「大人の お伽噺」 1.本物の金持ち 2.スノッブ 3.プレイボーイ その1 4.プレイボーイ その2 「百歳堂 交遊録」 「日々の愉しみ」 1.シャツとネクタイ 2.旅支度 3. My Favorite Shop 私家版・サルトリアル ダンデイ 1.19世紀と20世紀 その壱 2.19世紀と20世紀 その弐 3.19世紀と20世紀 その参 4.荷風と鏡花 「江戸趣味」 ■ 愛人 「愛人」 Ⅰ 「愛人」 Ⅱ 「愛人」 Ⅲ 「愛人」 Ⅳ 「愛人」 Ⅴ フォロー中のブログ
「サイトマップと ご挨拶」
■ お知らせ
クラシックな「紳士用品店」をはじめました、 「Classichaberdasher 六義 」 www.rikughi.co.jp (*ほぼ毎日更新、初めて訪れる方は会員登録が必要です) このブログは、4つのブログと関連して存在しています、 「六義庵百歳堂」 最初に書き出したもので、サブタイトルの「人生が二度あれば」というのは、二度とないので、いまの自分を愉しみましょうという反語のつもりでした、なんとか半世紀を越えて生きてきて今一度「人生は愉しい」ということを再認識するために書き出したものです、年々、呆けていきますから。 極めて、マイペースで書いています。 「百歳堂毘日乗」 文章の完成度や、テーマの整合性を考えずに、思いついたことを綴るものが欲しくて始めたものです、ある意味、アバンギャルドにしたいと願っています 「テーラー六義」 六義のテーラリングについての拘りです、少し拘りがあります 「Bespoke Shoes 六義」(NEW) 六義のビスポークシューズについての拘りです、先鋭的なクラッシックを目指しています それぞれのブログへの移動は、「リンク」をご利用下さい、 では、貴方が少しでも愉しまれることを願って、少しづつ筆を進めます、 百歳堂 敬白 その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||